【論文解説】寝る方角(向き)で変わる睡眠の質!驚きの研究結果とは!
「北枕は良くない」といった話を日本では良く聞きますよね。
しかし、科学的にどの方角を向いて寝ると睡眠の質が上がるのかについては、聞いたことがないのではないでしょうか?
そこでこの記事では、寝る方角ごとに睡眠の質がどのように変化するかについて研究した論文を、睡眠健康指導士である筆者が、出来るだけ分かりやすく解説します。
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なぜ北枕は良くないと言われているのか
まず初めに、なぜ日本で北枕は良くないと言われているか、について簡単に見ていきたいと思います。
まず「北枕」とは北の方角に枕を置いて、南の方角に足が来るように寝ることを指します。
そして、仏教で亡くなった方を北枕で寝かせていたことから、死者と同じ方角で寝るのは縁起が良くないと言われるようになりました。
ちなみに、他の国では同じ仏教徒の国でも北枕は縁起が悪いという文化はないようです。
北枕は科学的な根拠に基づくものではなく、日本の宗教的な理由によるものなのですね。
また、下記の動画では、北枕や各方角の風水的な効果について、住職の方が解説しています。風水的には、西向きが金運が下がって良くないとの説明がありました。
論文1. ベッドの方角と睡眠の質の関係
北枕が良くないという話は宗教的な理由から来ていることが分かったところで、次に気になる「科学的にはどの方角が良くて、どの方角が良くないか」について、実際に行われた研究を見ていきましょう。
まず紹介するのは、「Bedroom design orientation and sleep electroencephalography signals」(ベッドの方角と睡眠脳波信号)というタイトルで、フィンランドのラッペーンラータ大学の研究員とその他数名の研究者から発表された論文です。
この研究では上記の図の通り(若干向きが分かりづらいですが)、以下の2種類の部屋を用意し、合計21名の参加者に2回の昼寝をしてもらった際の脳波を測定し分析しました。
- 北が頭の南北向きにベッドを置いた部屋
- 西が頭の東西向きにベッドを置いた部屋
(内装や間取りは同じ)
実験結果
- 平均総睡眠時間(昼寝)は、南北向きで1.63時間、西向きで1.38時間
- 脳波の特定の信号が南北向きの方が統計的に優位なレベルで活発に
- 東西向きでは、途中で目が覚める中途覚醒が増加
これらの結果から、南北の方角を向いて寝るとより睡眠の質が高まる可能性が示唆されています。
ではなぜ、南北向きに寝ると睡眠の質が上がるのでしょうか。その理由は、北極や南極付近に存在する磁場(磁力が作用する場所)と論文内では考えられていて、磁場の方角に寝ることが睡眠の質を向上させるのでは、と書かれています。
方位磁針の簡略化した説明として、「地球は大きな磁石で北極の近くにS極の磁場、南極の近くにN極の磁場があるため、方位磁針のN極は北極のS極と引かれ合い北を向く」と言われています。
はるか遠くの北極や南極の磁場が自分の体と関連していると言われるとあまりピンときませんが、地球のどこにいても方位磁針が使えるということは、磁力が地球のどこにいても届いているということなので、体に何らかの作用があると考えられるのも納得できます。
※ この研究では南向きや西向きでの実験は行っていないこと、昼寝での計測であること、実験地域や実験人数による制約もある点には注意が必要です。
では次に、磁場と睡眠の関係について、別の論文から他の事例についても見ていきましょう!
論文2. 牛や鹿は休息中、みんな南北を向いている!?
ここからは、動物の事例について研究した論文を元に南北に存在する磁場と睡眠の影響について、見ていきたいと思います。
ここで紹介する論文は、「Magnetic alignment in grazing and resting cattle and deer」(放牧・休息中の牛や鹿の磁気アライメント)というタイトルの2008年にドイツのデュースブルクエッセン大学から発表された研究になります。
難しいタイトルですが、「牛や鹿などの動物は食事や休息の際に自然に体を南北に揃えている(アラインメント)」という事です。
この研究は、世界中の家畜(308牧区、n=8,510)、および放牧・休息中のアカシカとノロジカ(241地点、n=2,974)が、体の軸をほぼ南北に揃えていることを明らかにしました。
上記はそれぞれA = 牛、B = ノロジカ、C = アカシカの体の向きを表した図になります。特にB(ノロジカ)とC(アカシカ)では、南北の方角を向いている数が顕著に多いのが見て取れます。
磁場方向への体の向きが生物学的にどのような意味を持つのかについてはまだ謎が多く解明されていませんが、1つの仮説として、動物は体を南北に揃えておくことで方向感覚を保つことができ、緊急時の逃走などに役立つ、という事が論文内では言及されています。
まだ未知数な部分は多いですが、自然に南北の磁場方向に体を向けるということは、それが本能的に一番落ち着く向きである、と考えられますね。
北向きと南向きどちらが良いか
ここまでの論文で、南北にある磁場の方角を向いて寝るのが良いということが分かりました。
ではその中で、北と南どちらがより良いのでしょうか?ここからは南北どちらを向いて寝たら良いか、について焦点あてて見ていきましょう。
北向きと南向きのどちらが良いかについては、信頼できる論文が見当たりませんでしたが、Sleep Foundationという睡眠メディアにて以下の記載がありました。
頭痛と睡眠の方角を結びつける研究はありませんが、南を向いて寝ると高血圧のリスクを減らすことができるという証拠があります。
引用: https://www.sleepfoundation.org/sleeping-positions/best-direction-to-sleep#references-78232
体にも磁気エネルギーが流れていて(頭がN極、足がS極)、南を向くとN(頭)とS(南)が合うことが体に良いのではと説明されています。
日本で「北枕が良くない」と言われていることも考えると、心理的にも南向きに寝るのが一番良さそうですね。
まとめ
この記事ではいくつかの論文を元に、どの方角を向いて寝るのが良いかについて、見てまいりました。以下がそのまとめになります。
- 南北向きで寝る方が、東西向きより睡眠時間が長く、中途覚醒が少ない
- 牛や鹿など他の動物も休息時に南北に体を向けている
- 南を向いて高血圧のリスクが下がる
結果は南北にある磁場の方角、特に「南向きに寝る」と良さそう、という結論になりました。実際に人以外の動物でも本能的に体を南北に揃えているというのは驚きですよね。
但し、人によって個人差はあり、また向きによって合う合わないもあると思いますので、これらの論文の結果は1つの参考として頂ければ幸いです。
また、睡眠においては寝る方角だけでなく、睡眠環境、特にマットレスがとても重要になってきます。
予算や条件別のおすすめマットレスを、100種類以上のマットレスから厳選し下記の記事にまとめていますので、是非ご覧下さい。
引用文献
- Hekmatmanesh, A., Banaei, M., Sadeghniiat-Haghighi, K., & Najafi, A. (2019). Bedroom design orientation and sleep electroencephalography signals. Sleep Medicine, 6(1), 33-37.https://www.actamedicainternational.com/article.asp?aulast=Hekmatmanesh;epage=37;issn=2349-0578;issue=1;spage=33;volume=6;year=2019
- Begall, S., Cerveny, J., Neef, J., Vojtech, O., & Burda, H. (2008). Magnetic alignment in grazing and resting cattle and deer. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 105(36), 13451–13455. https://doi.org/10.1073/pnas.0803650105
- Summer, J. (2021, August 19). Which direction is best to sleep in?. Sleep Foundation. https://www.sleepfoundation.org/sleeping-positions/best-direction-to-sleep#references-78232